テンポ・ルバート(自由な速度で)での演奏は、
仲間内でも「とても難しいね」とよく話します。
難しいですが、歌モノを演奏するときに「ロマンチックな演出」として非常に有効なので、取り組むようにしています。
ルバートの演奏法
ルバートの演奏法を習った際、
「物理の法則に逆らわないように」とご教示いただきました。
例えばボールを坂で転がしたとき、
スピードが一瞬でコロッと変わったり、ピタッと急に止まったりはしません。
それと同じように、音楽を演奏するときも、
気持ちが良いからといって、不自然なほど急発進したり、急停止したり、タメすぎたりしてはいけない、と教わりました。
これがやってみると本当に難しいのです。
気持ちが良くて思わず伸ばしすぎると、後で聴いた時にたしかに「間伸び」している。
急停止すると、変に間が空いて、文字通り「間抜け」になってしまいます。
ルバートでよくある勘違い
ルバートでよくある勘違いとして教えていただいたのは
「ただ遅く演奏することは、ルバートではない」ということ。
今にも止まりそうなくらい遅くなってゆく演奏は、
せっかくの「ルバートの緩急=緊張感」の演出が台無しになってしまう、ということだったんです。
さらに困ったことに、
ルバートのパートがあまりにも遅いテンポで終わってしまうと、
イン・テンポに戻る際、意図したテンポに戻りきれないほど遅くなってしまいます。
(戻る際に、急に速くするのもおかしいからです。)
ルバートの緊張感を保つには
ではどうすれば「ルバートの緩急=緊張感」がつくのでしょう。
そこで思い出していただきたいことが「ボールを坂で転がす例」です。
ボールを坂で転がすと、勢いづいて、だんだんと加速してゆきます。
坂が緩やかになり、平坦になるときは、だんだんと減速し、やがて止まります。
でも完全に止まってしまっては、音楽になりません。
必要な間はあるけれど「どっこいしょ」と休んではいけないのです。
音符が勢いづいて「だんだん加速したり、だんだん減速したりするさま」を
自然の法則に従い、緊張感が途切れないように表現するのがルバートなのだ、と理解するようにしています。